高校野球の時期がやってきました。
若い世代の野球離れが深刻な問題になっている昨今ですが、
高校野球の甲子園常連校はその限りではありません。
選手たちは、
それまでの自分の実績や実力と野球部のレベルの高さを考えたうえで、
「甲子園に出たい」という思いを胸に強豪校に入学します。
時にはスカウトを受けて胸に熱いものをもって入学します。
しかし、地方大会のベンチ入りメンバーは20名、
甲子園でユニフォームを着ることができるのは18名。
100人もの部員を抱える野球部なら、8割以上が補欠ということになります。
ライバルとの競争に敗れて練習の機会を奪われたり、
ケガに苦しんだり、
チームメイトや指導者との人間関係に悩んだり......。
いつのまにか、心が野球から離れる選手も少なからずいます。
これが現実です。
春のセンバツで2度の優勝、
甲子園で通算32勝を挙げている広陵(広島)の中井哲之監督は
『補欠の力 広陵OBはなぜ卒業後に成長するのか?』(ぴあ)
という書籍のなかでこう語っています。
「『ポジションは補欠です。3年間野球をやりました』
と胸を張れるのがかっこいいと思います。
そのことを評価してくれる大人を大事にせえと言っています。
『おまえはレギュラーじゃなかったんか......』
と言う人はそれだけのもんですから」
春夏合わせて4回の甲子園出場を誇る名門校で、
ユニフォームを着て聖地の土を踏むことができる選手は限られています。
「でも、試合に出ることだけが甲子園じゃないと僕は思っています。
いろいろなところに甲子園がある。
バスに揺られる時間も、
勝ち上がったときに泊めていただく天理教の宿舎にも。
プレーすることだけじゃなくて、
甲子園に出るから経験できることがたくさんあります。
あとで、
『アルプススタンドは暑かった』
『浜風が強かった』と感じるのも甲子園なんです」(中井監督)
甲子園常連校に在籍していたときには補欠、
その後大学を経てプロ野球に進んだある選手は言う。
『「不思議なもので、3年生の仲がいい学年は強い。
レギュラーと控え選手の間に溝があるときは勝てない」
『試合に出られない選手の心を最後までチームに結び付けること』
これが、大所帯の野球部にとって大きなテーマだ。』
ライバルは、
自分以外のすべての人なのかもしれません。
試合終了のホイッスルがなり終わったら、
相手選手を讃えられるでしょうか?
「君と戦えて、嬉しかった。」
と言えるでしょうか?
真の強さって、
何だろうか?
最近、改めて考えさせられます。